2019年3月29日(金)~31日(日)/横浜パシフィコ
初日7時過ぎより現地で視察した。
受付は展示ホールAの1カ所のみ、自動発券機は当日参加用10機、事前申込用10機と、思った以上に少なく、混雑が予想された。講演開始は8時、そのまま受付を9時ごろまで見守るが、並んでせいぜい1機あたり4~5名と、混雑らしい混雑はない。参加者15,000名以上の、国内有数の大規模学術集会のため、気抜けするほどのスムーズさである。
その理由を考えてみた。
1)講演開始を8時からにすることにより、受付スタート時の集中が回避できた。
2)参加者の9割以上が医師であることにより、入場のタイミングが集中しなかった。
3)参加者の9割以上が医師であることから、学樹種集会への参加に慣れている方が大半を占めた。
だが、いずれもわれわれの抱いた疑問への回答としては不十分に思う。引き続きその理由については調査していきたい。
巨大施設を使用することの常として、参加者にとっては移動がたいへんであることは織り込み済みである。ただ、そのための負担を少しでも軽減する目的で、具体的な対応策がとられているかどうかに興味がある。
誘導の問題としては、みなとみらい駅から会場へ向かう通路に、数名の誘導スタッフが配置されていたが、声も小さく、聞かれたら応える程度で、その責を十分果たしていたとは言えないように思う。確かに参加者の中にはいろいろなタイプの方がいて、積極的に声をかけても耳を貸さない方もいるし、必要以上に根掘り葉掘り聞いてくるものの案内された内容を無視して動く方もいるので、対応のむずかしさは理解できるものの、誘導の役割をまっとうするためにはむだを覚悟で声を張る必要を実感した。
プログラムセッション間の移動時間について考慮されているかどうかは判断できないが、ランチョンセミナー開始前に走って移動されている方も少なくなかったことから、やはりインターバル20分は巨大施設を使用するにはやや厳しかったのではないかと思う。プログラム進行が遅れる可能性も考えると、もう少し余裕がほしかったように思う。
国立大ホール、会議センター、アネックスホールをどのようにリンクしたらうまく使えるのかに答えはないし、参加者としてももはや覚悟の上とはいえ、その大変さを改めて体感すると、第51回日本肝臓学会総会で実施したe学会や、第46回日本集中治療医学会学術集会で好評を得たライブ配信プログラムは、もっと積極的に導入してほしいツールと実感したところである。とくに、いくつかの会場では立ち見になり、さらに通路に参加者があふれていた。プログラム編成の段階では、当然ながら多くの聴衆を集めるであろうプログラムはそれなりの会場にて開催すべく配慮されているはずである。もちろん、編成側の思惑どおりにはいかないことも多く、意に反して人気を呼ぶプログラムもよく経験する。また、人気とわかっていても、小規模な会場にて開催せざるをえないことももちろん多い。緊急の対応で音声のみ会場前に流していたが、未然の対応策として、今後も引き続き提案し続けることの必要性を痛感した次第である。
事前参加申込に連動して共催セミナーも予約でき、アプリ上で自由にキャンセルしたり変更したりできるシステムであった。
このシステムが便利と思い、導入できないかと聞かれことも多いが、その都度そのデメリットを伝え、断念していただくようにしている。
人間の心理として、自由に申し込めるしいつでもキャンセルや変更が可能、そして無料であるとなると、参加するかしないかを熟考することなく、まずは予約してしまうものである。変更しても変更手数料がかかるわけでもなく、ペナルティが課せられるわけでもないと、どうしても適当な対応にならざるをえない。その結果として、チケットを持った方の参加はまばらで、その脇にチケットを持たない方の長蛇の列ができ、チケットが無効になるセミナー開始時点まで会場内はガラガラにもかかわらずその忍耐は続く。セミナーが開始すると、ようやくチケットを持たない方たちの入場が始まり、会場内はごそごそと落ち着かない。それでも昼食が出払い、会場内が満席になればいいが、ほとんどのセミナーでは昼食は会場前に積まれている。
学術集会の運営事務局を担当していると、共催企業の学術集会協賛にかける思いは筆舌に尽くしがたい。多額の協賛金を負担し、煩雑な準備の労力を費やし、ようやく当日にこぎつけた挙句がこれでは、モチベーションを維持することはむずかしいように感じる。昨今、協賛の厳しさを嘆き、苦労して頭を下げて協賛を集められた先生方でさえ、参加者への無用のサービスの前に、このような共催企業の好意に応えることのできない学術集会のデザインに、とても残念に思うことが多い。また、僭越ではあるものの、参加者の方々にも、学術集会を支えてくれている企業への敬意を忘れないでいただきたいと思う。
今回も多くの海外講演者が招請され、それぞれ世界レベルの循環器病研究・診療について講演されている。いくつかの講演には同時通訳が入っていたが、同時通訳が付いていない講演は、やはり聴衆は少ない。
同時通訳の導入を進めても、もちろん費用の問題もあって、導入に二の足を踏まれるのが常で、とても残念に思う。確かに医師の先生方は留学経験があったり、海外学会への参加など、英語へのハードルはかなり低いことは理解しているし、スライドを見るだけでも、仮に英語の講演が理解できなくても勉強になるものだという意見もわかるような気がする。ただ、せっかく学術集会に参加して、貴重な時間を費やすうえで、スライドを見て、何となく理解できる程度の状態を、よしとするかどうかはどうなんだろうかと疑問にも思う。
高額の招請費用を払って招請し、遠路遥々来日してくださった講師の先生の、世界レベルの講演を、たった数十人の参加者にしか聴いてもらえないことは、私たち市民にとっても大きな損失と思えてしかたない。多忙な中で時間をやり繰りして来日してくださった講師の先生にとっても、満場の聴衆の前で講演したかったであろうことを思うに、5Gの早期導入と定着が心から待たれるところである。
医療は医師をはじめとする医療関係者のみの力で発展するものではなく、また、医療関係者のみで支えられるものではない。また、医療および医療関係者を理解することも、これからの医療には必須の力となる。その意味で、市民公開講座や啓発プログラム・展示を通じて市民に対して情報を発信していくことは、学術集荷の大切な使命の一つである。
本学術集会では、会場周辺のイベントスペースを利用して、医療展示、AED講習会、インターベンション体験コーナーなどを設け、市民啓発や市民との相互理解の場を提供していた。
弊社スタッフもその一つ-大動脈弁置換術を体験し、医療技術がいかに進歩を遂げているかという点のみならず、医師の業務のたいへんさや責任の重さを垣間見る、よい経験となったようである。その延長線上に、私たちの仕事がもつ意味を深く理解し、自信とプライドをもって日々の業務に取り組む気持ちを触発するものがあれば、それもまた主催者の意図が一つの実を結んだものといえよう。